西浦和駅〜田島ヶ原〜秋ヶ瀬取水堰〜羽根倉橋〜治水橋〜指扇駅  約14Km
2004年4月17日、サクラソウの開花時期にあわせて田島ヶ原のサクラソウ自生地の見学に行きました。その様子は前ページに記しましたが、サクラソウを堪能した後、引き続いて荒川左岸を川越線の指扇まで歩きました。
サクラソウを見学した後、秋ヶ瀬橋の下をくぐりり抜ける。こちら側には、水生植物園、野鳥園といった形で自然が残されている。近くに小川が流れており、子供たちが小魚やザリガニとりに夢中になっていた。
土手の上を行くと、秋ヶ瀬取水堰が見えてくる。これは東京都民の水道にとって大変大切な施設である。ここで荒川の水をせき止めて取水し、約2Km離れた朝霞浄水場に送り、ここで浄水された水が東京都民の水道水として使用される。なお、荒川には上流の鴻巣付近で利根川からの水を導水する武蔵水路が合流しており、この秋ヶ瀬で取水する水は実質的には利根川の水ということになる。

取水堰の上流側は、せき止められた水が川幅いっぱいに広がり、護岸には釣人の姿も見えて、いかにものんびりとした風景である。さらに少し行くと、河原でパラグライダーを楽しむ人たちが見えてきた。ちょうど飛び立つ地点で、離陸の様子がよく分かる。大きな川の河原ではよく見かけるのだが、あんな扇風機のお化けみたいなエンジンを背負ってさぞうるさいだろうなといつも思う。
さらに少し行くと、堤防の外側に建設中の池が見えてくる。工事の看板を見ると、「洪水、渇水から暮らしを守る荒川第1調節池建設工事」とある。洪水時にあふれた水を引き込むことと、渇水時には貯水池としての役割も果たすのだろう。あふれた水を流す部分は、堤防の高さが他に比べて低くなっている。見ていると、工事用のダンプがひっきりなしにやってくる。

調節池の建設工事区間ははかなり長く、羽根倉橋まで続いていた。前に見た彩湖も同じような機能を持っているが、こちらのほうが規模が大きいような気がする。大規模災害に対する地道な工事は、現在でも続けられているのだなあ。この他にも荒川、隅田川では、スーパー堤防の工事があちこちで行われている。

羽根倉橋から上流は、河川敷をゴルフ場が占めてしまい、川の近くを歩けなくなってしまう。堤防は川の流れからかなり離れたところに設置されている。前回歩いたときは、この堤防の上を歩いたのだが、今回はゴルフ場沿いにつけられた道を歩くことにした。堤防の内側には、ゴルフ場のほかに広い田圃(たんぼ)が広がっている。まだ、田植え時期前で田圃には水が張られておらず、広大な荒地のような感じがする。さらに進むと、田圃は途切れ、総合運動場として整備されている。

やがて、前方にやや小ぶりな橋が見えてくる。治水橋である。この橋の近辺に錦乃原桜草園がある。桜草がこの周辺約6ヘクタールにわたり咲き乱れていた時代があった。昭和9年には国の天然記念物に指定され、多くの人が訪れたが食料増産の社会的要請が強まり、昭和22年ごろには姿を消してしまったという。その後、わずかに残ったサクラソウの原種を保存・育成するためにこの桜草園が設置された。

治水橋を過ぎた後も川辺のゴルフ場は延々と続いている。おそらくまた別のゴルフ場が始まっているのだろう。やがて、はるか遠くにあった堤防が近づいてきたので、堤防上を歩くことにする。しばらくすると、川越線の踏切が見えてきた。その少し手前に海から44Kmの標識が立っていた。この辺で土手を降り、川越線の指扇駅に向かう。ここから約15分くらいで駅に着く。指扇駅は埼京線の開通で東京までの便が非常によくなった。駅も大きくなったし、駅周辺の開発も進んでいるようだ。
見どころなど
このコースでの見どころは、なんといっても秋ヶ瀬取水堰でしょう。ここで、秋ヶ瀬取水堰および朝霞浄水場についてもう少し説明を追加させていただきます。(「東京近代水道100年史」などによる)

東京都の水道水の原水は、当初、そのほとんどを多摩川の水に頼っていました。しかし、東京都の人口の増加に伴い、多摩川だけでまかないきれないことは明らかでした。昭和39年には東京の水不足もピークに達し、東京オリンピックをひかえ他の水源からの原水供給は緊急の課題でした。ちょうどこの時期に、この秋ヶ瀬取水堰および朝霞浄水場が完成し、オリンピック時の水供給に支障をきたすことが避けられたのです。

その後、利根川の水が武蔵水路により荒川に導水され、利根川の水をここで取水できるようになり、東京都水道の万年水不足は解消されたのです。現在、ここでは最大、日量120万立方メートルの水が取水されています。そのうち90万立方メートルが朝霞浄水場で処理され、残りの30万立方メートルは東村山浄水場に送水され、ここで処理されたのち、同じく東京都の水道水として使用されています。もちろん、利根川の水はここだけで取水されているわけではありませんが、ここでの取水は大きな比重を占めています。

今年の東京地方は記録的な暑さで、梅雨時にも雨が少なく、昔だったらダムの貯水量が何パーセントになったとか連日報道されたものですが、近頃ではあまり聞かなくなりました。その裏にはこの取水堰などからの利根川の原水供給という設備的な裏づけもあるのです。

昨日(2004.9.11)、私は御茶ノ水にある東京都水道歴史館を見学しました。たまたま、そこに「本日の貯水量」という掲示がありました。
9月10日の貯水量   多摩川系 : 1億7930万立方メートル (満水時の 82.0%)
               利根川系 : 1億8732万立方メートル (満水時の 55.0%)

昭和39年、東京都水道最大のピンチ時、多摩川水系の小河内ダムの貯水量は364万立方メートル(満水時の1.5%!!)まで減少し、利根川系からの取水も少なく、奥利根にはまだダムもできていなかったのですから、東京都の窮状が十分に推察できます。先ほどの数値と比べると、まさに今昔の感があります。







川越線踏切付近(海から44Kmの標識)
荒川堤防(土手)上の散歩道
錦乃原のサクラソウ
治水橋と錦乃原桜草園
田圃が途切れ、広大なグラウンドとなる
堤防とゴルフ場の間には広大な田圃が広がる
ゴルフ場沿いにつけられた道を歩く(左、ゴルフ場。右、田圃)
調節池の工事は羽根倉橋付近から始まっている
羽根倉橋(国道463号線)
あふれた水を流す部分(コンクリートの部分は周りの堤防より少し低くなっている)
荒川第1調節池建設現場
パラグライダーが飛び立つ
秋ヶ瀬取水堰の上流方面を望む
秋ヶ瀬取水堰(左)と取水口(右)
(ここで取水された水は朝霞浄水場に送られ、東京都民の水道水となる)
秋ヶ瀬取水堰(東京都水道にとって大切な施設)
水生植物園近辺にて
上流から見た秋ヶ瀬橋(向こう側がサクラソウ公園、こちら側が水生植物園など)
荒川を歩く 4