イギリス旅行 第1日目

湖水地方をめぐる1日


イングランド北部の湖水地方には、16の大きな湖と約500におよぶ小さな湖が点在しており、国立公園となっている。今日は、ランカスターからこの湖水地方を一日かけてめぐる。見物後、ランカスターに戻り、同じホテルに連泊する。

ランカスターからウィンダミア湖へ
この日は、9時ちょうどにランカスターのホテルを出発した。朝から雨というのは、この旅行で初めてのことである。バスはすぐに高速道路M6に入り、しばらく走った後、一般国道A591号線に移って湖水地方に向かう。車窓からの眺めは、緩やかな丘陵地帯に牛や羊が草を食み、大麦や小麦の植えられた田園が広がる。基本的にはこれまで見てきた風景と変わらない。

グラスミア散策聖オズワルズ教会、ワーズワースの墓など
グラスミアは小さな村だが、詩人ワーズワースが暮らした風光明媚な場所ということで、ホテルなども多い。我々はそのうちの一つ、レッドライオン・ホテルのレストランで昼食をとった。時刻は13時頃、メニューは、ますのグリルだった。
昼食が終わり、少し雨が降っているが、皆で聖オズワルズ教会まで歩く。レッドライオンホテルの少し先に、ワーズワース・ホテルがある。この建物は、19世紀には芸術家や文人が集まるサロンだったが、1970年代に改装して現在のようなホテルになったという。古きよき時代の英国スタイルを今に伝え、ハイクウォリティのサービスもあいまって人気ホテルとなっている。ホテルの近くから教会の裏手を通って小径が続き、その道の傍らにワーズワース一家の墓が建っている。ここは聖オズワルズ教会の中庭で、教会入口はすぐ先である。

教会を見学した後、自由行動になった。教会のすぐそばに、「グラスミア・ジンジャーブレッド・ショップ」という小さな店がある。添乗員さんの話では、「ここでしか売っていない人気商品ですよ」ということで、たしかにたくさん人が並んでいる。私たちは、普段はあまり「行列のできる店」の買い物はしないのだが、このときは妻が並んで買ってきた。お土産用にといくつか買ったので、ホテルに帰ったからさっそく食べてみた。かなり固いクッキーで、ジンジャーの味が強い。私には行列してまで買うほどのものとは思えなかったが、妻はおいしいといっていた。嗜好は人によって違うので、なんとも言えない。
この後、私たちは教会付近の自然の中を散策した。すぐ近くをきれいな川が流れており、小さな橋で向こう岸に渡ると、川沿いに小径が続いている。林の間から望んだ山の姿が、イギリスの風景とは思えないくらいに高く見えた。

ワーズワースの住んだ家、ダブ・コテージ。グラスミア村の様子
集合時間となり、教会の近くからバスでワーズワースの住んだ家、ダブ・コテージに向かう。1Kmくらいの距離なので歩けない距離ではないが、時間を効率的に使うためにはバスは便利だ。
ダブ・コテージは、もともと旅籠だった建物だが、後にワーズワースが妹のドロシーや妻のメアリーと住み、彼が最も精力的に創作活動をした時期(1799〜1808)を過ごした家である。今も当時のままに保存され、大詩人の暮らしぶりをうかがうことが出来る。隣接している博物館にはワーズワースの自筆原稿や妹ドロシーの日記などが展示されているという。我々は、建物の写真を撮って、そこから村の中の細い道を通ってライダル・マウントに向かった。

ウィンダミア湖のウォーター・ヘッド。観光船乗場付近
バスは約1時間走って、ウィンダミア湖の北端、ウォーターヘッドに着いた。我々はここから観光船に乗り、湖の南端のレイクサイドまでクルーズを楽しむことになっている。ウィンダミア湖は、湖水地方で最も大きく、南北に17Kmもある細長い湖である。船の出発まではまだ少し時間があるので、私たちは湖畔を少し歩いた。湖畔には白鳥や鴨などがたくさんいる。船着き場には大きな観光船が何隻か停泊している。船着き場のすぐ近くにウォーターヘッドホテルがあり、手前に咲いているたくさんの青いアジサイの花と、白いクラシックな建物が印象的だった。

ウィンダミア湖クルーズ
船は10:30頃出航した。ウォーターヘッドは次第に遠ざかり湖の真中に出る。細長い湖なので両岸の様子が近くに見える。これまで英国内ではあまり見られなかった山らしい山が見られ、日本の湖の景色を思い出させる。進行方向右手(右岸)のほうは森に覆われ、建物などもほとんど見えない。ピーターラビットの作者、ベアトリクス・ポターの住んでいたヒルトップもこの山の森の中にあるはずだ。反対側の左岸には湖岸を巡る幹線道路が走り、時折、道路や湖岸の建物などが見える。空はどんよりと曇り、全体に暗い景色だが、近くを白いヨットや大きな観光船が通り過ぎると一瞬、景色が華やぐ。時折雨の降る肌寒い天気だが、私はずっとデッキから湖水の風景を眺めていた。やがて、船の到着地、レイクサイドの船着場が見えてきた。船着場に隣接して鉄道の駅があり、列車が停まっている。我々は下船した後、この列車に乗ることになっている。

レイクサイド&ハーヴァースウェイト鉄道乗車
下船するとすぐに添乗員さんが鉄道の切符を買いに行き、我々はそれを受け取って列車に乗り込んだ。席に着くまでは何かとあわただしく、写真を撮る隙もなかったのだが、この列車はSLに牽かれたれっきとした保存鉄道である。席に着くと、まもなく列車は動き出した。渓谷の間を縫うように、ゆっくりと進んでゆく。あいにくの雨で、満足できる車窓風景写真はとれなかった。
この鉄道は「レイクサイド&ハーヴァースウェイト鉄道」といい、レイクサイド駅からハーヴァースウェイト駅までを約20分で結んでいる。昔は木材などを運んだのだろうが、現在は観光列車として利用されており、季節によっても違うが、大体1時間おきに走っているようだ。
終点のハーヴァーウェイト駅では写真撮影の時間が十分にあったので、SLの付け替え作業から出発までの間、心ゆくまで写真を撮ることが出来た。やはり、SLは絵になる。

ウィンダミア湖畔道路を通ってグラスミアへ
鉄道の終点ハーヴァースウェイト駅からは、バスで次の目的地グラスミアに向かう。グラスミアは、ウィンダミア湖の北にあるグラスミア湖畔の小さな村で、詩人ワーズワースが定住したことで知られている。バスはウィンダミア湖右岸の道路を走って、先ほど船に乗ったウォーターヘッド方面に戻る。木々の間からは、時折、ウィンダミア湖の様子が望める。ウォーターヘッドを過ぎ、さらに北に走ると、バスの車窓から小さな二階建ての石造りの家が見えた。これは「ブリッジ・ハウス」といい、17世紀ごろ建てられ、文字通り「石橋の上に建てられた」家である。主人が土地の税金逃れのために建てたらしいが、周りの風景ともマッチして風情があり、画家ターナーにも描かれるなど有名になった。
少し先で、グラスミア湖が見えた。湖水地方にたくさんある小さな湖のひとつである。グラスミアはこの湖畔にある小さな村である。バスは、やがてホテル、レストラン、雑貨屋などが並ぶ一角にとまった。

ボウネス。「ベアトリクス・ポターの世界」へ
ライダル・マウントの見学を終わり、バスで本日の最後の見学地、ボウネスに向かう。この町はウィンダミア湖左岸の賑やかな町で、クルーズ船の発着所もある。我々は、この町にある「ベアトリクス・ポターの世界」館を見学した。ベアトリクス・ポターは世界中の人に親しまれる絵本、「ピーター・ラビットのおはなし」などの作者である。
「ベアトリクス・ポターの世界」館では、はじめにポターの生涯がビデオで紹介され、その後、「ピーター・ラビット」をはじめ「リスのナトキン」などおなじみのポター・ワールドのキャラクターが登場し、絵本の中に迷い込んだような感覚が味わえる。
ちなみに、ベアトリクス・ポターは、この絵本の印税をもとにボウネスの対岸のニア・ソーリー村にヒルトップ農場を購入し、晩年はそこで暮らした。その後、湖水地方が開発の波に荒らされるのを防ぐために周囲の土地を買い増し、自然保護に努めた。77歳で没した後は、その遺志により所有地はすべて「ナショナルトラスト」に寄附された。なお、「ナショナル・トラスト」という運動は、この湖水地方ではじまったものだという。
「ポターの世界」を出た後、ボウネスの町のレストランで夕食となった。夕食後、バスで来たときと同じ道を戻り、ランカスターのホテルに戻ったのは20時頃だった。

ライダル・マウントと庭園
村の細い石畳の道を2,3分歩くと、ライダル・マウントの入口が見えてくる。ライダル・マウントはワーズワースが亡くなるまでの37年間(1813〜1850)を家族とともに過ごした家で、現在も建物の一部は居住用として使われ、ワーズワースが住んだ当時のままの状態で保存されている。
入口を入ると左手すぐのところに入場券売り場、売店などがあり、そのほかにもいくつかスレート造りの古い家が建っている。その先の白い瀟洒な建物がライダル・マウントで、ワーズワースが住んだ家である。建物の内部は一般公開されており、部屋の様子とともに肖像画、書籍、日用品の一部などを見学できる。庭からも居間の様子が見え、窓際に置かれたワーズワースの胸像が訪問者を暖かく迎えているようだ。、
ワーズワースは熱心な造園家としても知られ、4エーカーにおよぶ庭園は彼が設計したとおりにほぼ保たれている。我々はこの広い庭園の中を思い思いに巡った。

ランカスターからの車窓風景A
大麦か小麦の畑が続いている。瀟洒な家は農家だろうか

ランカスターからの車窓風景@
手前に牛、奥のほうに羊が放牧されている。境界は石積みの垣で区切っている。この地方はスレートが多く産出するので、石垣が多いのだという

ウォーターヘッド・ホテル
船乗場の広場の背後に建つウォーターヘッドホテル。青いアジサイと白いクラシックな建物が印象的だった

ウォーターヘッド風景A
大きな観光船が何隻か停泊している。手漕ぎのボートも用意されている

ウォーターヘッド風景@
ウィンダミア湖の最北端がウォーターヘッドである。船乗場のすぐ近くにたくさんの白鳥や鴨などがいる

レイクサイドの様子
レイクサイドは湖の南端である。船着場に隣接して鉄道の駅があり、列車が停まっている

ウィンダミア湖右岸の風景
森に覆われているが、時折瀟洒な建物も見える。ベアトリックス・ポターの住んでいたヒル・トップもこちら側にある

船からウォーターヘッド方面を望む
ウィンダミア湖の中では最も大きな港で、周辺には大きな観光船のほか、たくさんのヨットなども係留されている

客室内の様子
懐かしい車内風景である。お客は少なく、1両全部が我々の貸切状態であった

レイクサイド駅に停車中の列車
発車までにあまり時間がなかったので、前に回ってSLの写真を撮ることは出来なかった
客車後部の様子も懐かしい

発車直前のSLの姿
前からも上からも勢いよく蒸気を噴出し、今まさに発車しようとするところである。観光客に愛想を振りまいていた機関士さんも、ぐっと引き締まった表情になる

ハーヴァースウェイト駅にスタンバイ中のSL
先頭のSLは、駅に到着すると切り離され、駅の少し先で方向転換し、脇の線路を戻ってきて少し先までいってバックし、客車の先頭に連結する。これらの一連の作業を私は駅の跨線橋からずっと眺めていた

車窓からグラスミア湖を望む
グラスミアの村に近い小さな湖。春には湖畔でワーズワースの詩で有名な水仙の群落も見られるだろう

ブリッジ・ハウス
添乗員さんの話では「あの小さな家に14、5人が暮らしたらしいですよ」とのことだ

車窓からウィンダミア湖を望む
先ほどは船で湖を北から南に進んだが、今はバスで湖岸の道を南から北に進んでいる

教会に向かう小径
皆の立ち止まっているところにワーズワース一家の墓がある

聖オズワルズ教会
14世紀に建てられた教会で、梁を組み上げた造りが歴史を感じさせる。ワーズワース一家は、いつもこの教会で礼拝していた

ワーズワース一家の眠る墓
花の供えてある右側の墓碑に「ウィリアム・ワーズワース 1850、メアリー・ワーズワース 1859」と並べて刻まれている

ワーズワース ホテル
19世紀に芸術家や文人が集まるサロンだった建物を1970年代に改装。アンティーク家具が配された部屋は古きよき英国スタイルを今に伝え、質の高いサービスとあいまって人気ホテルとなった

レッドライオン ホテル
グラスミアにはホテルが多いが、我々はそのうちの一つレッドライオンホテルのレストランで昼食をとった

林の間から山を望む
ちょっとした野原があり、林の間から山が見えた。日本では珍しい風景ではないが、イングランド内ではあまり見られない風景といえるのだろう

教会付近の自然の中を散策
きれいな川が流れており、小さな橋を渡ると川沿いに小径が続いている

グラスミア・ジンジャーブレッド・ショップ
1854年創業の店で、行列が出来ていたが、ここにしか売っていないというので、妻が並んで買ってきた

グラスミア村の様子
ダブ・コテージ付近の村の様子である。この地方特有のスレートを積み重ねた素朴な家が続いている

ダブ・コテージ
ワーズワースが最も精力的に創作活動を行った時期に住んだ家。今もワーズワース財団によって当時のままに保存されている

窓際のワーズワースの胸像
庭から居間の様子が見え、窓際に置かれたワーズワースの像が訪問者に微笑みかけている

ライダル・マウントの外観
建物は高い場所に建っており、庭園は緩やかに下る斜面を中心に自然を生かして造園されている。

ライダルマウント入口付近の様子
入口付近には古いスレート造りの建物があり、その先に白い瀟洒なライダル・マウントがある

私たちはまず、建物から林に続く道を歩いた。木々の間から小さな湖が下に見え、ここがかなり高い場所にあることが分かる。この湖はライダル湖(Rydal Water)といい、湖水地方では最も小さな湖だという。林の中の坂を下りてゆくと、一番下に長方形の平らな芝地がある。案内図によると、これはクリケット用の芝地だという。そこから、ちょっとした林を隔てて広い斜面の芝地がライダル・マウントまで続いている。このメインの芝地の周辺には遊歩道が設けられ、四季の草花やカエデ、モクレン、シャクナゲ、バラなどが植えられている。花の季節には、訪問者の目を十分に楽しませてくれる。

庭園の花々の一例
遊歩道に沿って様々な花が咲いているが、それらを代表してバラに登場してもらった

ライダル・マウント庭園のメインの芝地
ゆるい斜面一杯に芝生があり、周囲の遊歩道には四季の花々が植えられ、訪問者の目を楽しませてくれる

ライダル湖を望む
木々の間から小さなライダル湖が見える。「ライダル・マウント」の名のとおり、ここは高い場所にある

ボウネスの町の様子
ボウネスは鉄道の終着駅ウィンダミアに近く、クルーズ船の発着所もあり賑やかな町である

ベアトリクス・ポターの世界
ポターの描く絵本の世界が映像や人形によって再現され、知らず知らずのうちにその世界に引き込まれる